Laravelドキュメントの翻訳について
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ツイートをご覧になっていた方は、お気づきになったでしょうが、考えが分散していますので、まとめておきます。
収益化
LaravelはMITライセンス下でリリースされています。それを素直に受け取るのであれば、翻訳サイトに広告を貼っていることはまったく問題ないと考えています。
ややこしいのは、そのライセンスがそのままドキュメントに適用されるかどうかが明確ではないことです。詳細は後述しますが、あやふやなため翻訳前にTaylorさんに問い合わせましたが、返事は戻ってきていません。(翻訳時の話です。現在はMITライセンスが明確に付いています。)
しかし、書籍出版の際にロゴの使用許諾を問い合わせたときは、OKの返事をもらっています。ロゴに関してはかつてのWordpressの問題があったため、自由に使用できなくなっている場合もあり、ライセンスがいくら使用自由であっても確認しておいたほうが良いのです。(これについても、明確に通常の著作物であると明記したほうが良いとTaylorさんに連絡したことがありますが、無視されました。しかたありません。たいていの開発者は気にしないものです。多分返事がもらえたのは、明確な使用許可がないと著作中での使用を出版社が認めないという事情を伝えたからです。)
たぶん、ドキュメントについては本人はMITライセンス下で提供しているので、答える必要がない、決まりきったことを聞いてくるなと言うことで無視されたのだと想像しました。
Laravelがそうだとは言いませんが、「緩くて、無償でも有償でも使って良くて、自由に改変できて」、そして「みんな使って流行っているし」という理由でMITが選ばれることが多いのだと思います。
そもそもライセンスを付けてオープンにするということは、いちいち使用の許可を出さなくても良いからです。本人がそのつもりでライセンスを付けている場合、「使っていい」と尋ねても大抵は無視され、たまに「MITライセンス下で公開している」と返ってくるのです。
そうした事情から、返事がない=MITライセンス下と推定しました。日本語翻訳前は確か、イタリア語、エスペラント語、フランス語に有志が翻訳していましたし、それについてTaylor氏からは何もクレームされていませんでした。また、公式サイトに「他の原語のドキュメントを乗せて欲しい」という要望に対しTaylorさんは断っていました。自分は英語しかわからないから、責任は持てない。各自で勝手にやってくれというスタンスでした。
また、複数のユーザーがLaravel英語原文をLeanpubで有償・無償を切り替えられるようにして電子書籍として販売しています。(現在は知りません。原文のMarkdown書籍にhtmlタグが入るようになってから、電子書籍化しても美しくなくなったためです。)私も、日本語翻訳版を販売していました。(Leanpubは日本語に完全に対応できているわけでなく、文章が切れてしまい、調整がとても大変なため、止めました。)しかし、Taylorさんからクレームをついたことはありません。こうした事実からも、Taylorさんはドキュメントも含め、MIT下で公開しているのだろうと、判断していました。
繰り返しになりますが、現在はMITライセンスのファイルを含み配布されています。ですから、広告を張り、ホストしても問題ないことが一層明確になりました。
ドキュメントの問題
そもそも、MITはソフトウェアの利用と配布に関するライセンスです。ドキュメントにも適用されると考えられますが、ドキュメント向きのライセンスではありません。
状況としてややこしいのが、ソースコードとドキュメントのライセンスが別れているものがあるのです。
たとえば、私のkore1server.comには、Mockeryの古いドキュメント翻訳があります。これは、利用自由なライセンス下でREADMEにかかれている内容でしたので、翻訳して、公開できました。
しかし、現在のMockeryのドキュメントは、どうも個人の著作権下にあるらしいので、新しく翻訳し直すことができません。(追記:ドキュメントがソースのリポジトリに含まれたため、現在は公開ライセンス下にあると判断できます。)
私は参照ではなく、完全な翻訳を公開したい場合に、ライセンスの判断が簡単に付かない場合は、訳す前に原著者もしくは権利保持者の代表に確認、許可を得ます。極めて、当たり前のことをしています。
リポジトリの問題
Laravelの場合、実際にMITについて触れられており、ライセンスの本文を含んでいたのはlaravel/laravelリポジトリです。ドキュメントは別にdocsリポジトリでホストされています。(現在、frameworkリポでは、READMEの最後で明記されていますが、ライセンス本文のファイルはありません。docsとframeworkリポではMITライセンス本文のファイルが含まれています。数年前より明確になっています。)
この場合、厳密にはdocsリポジトリ下のドキュメントがMIT下にあるかどうかは言えません。たとえTaylorさん本人がそのつもりであっても、つもりでなくてもです。ライセンスの条項はリポジトリという配布形態について考えられていません。
Composer以前、初期のLaravelのように、ドキュメントが配布パッケージに含まれているのであれば、もちろん明確に適用内です。
開発者の認識として、あるプロジェクトにMITを適用したら、たとえリポジトリが別れていてもMITが適用されているだろうと考えるのは妥当です。しかし、それが法律的に正しいかは別の問題です。しかも、法律はそれぞれの国で異なるわけです。ですから、私は「グレー」だと表現しました。
現在はこの点では真っ白です。しかし、readouble.comには古いバージョンの翻訳も存在しています。少しでもグレーな部分を含んでいれば、グレーです。
理想的には各リポジトリごとにライセンスを明記しておくべきで、現状Laravelはそうなっています。翻訳は、グレーな時代から続けていました。
翻訳の問題
古いライセンスが曖昧な時代のドキュメントを含んでいるとは言え、現状はMITと明記していますので、問題無しと判断しています。ですから「英語オリジナル版」に対して広告を貼っているのは、問題なしと判断している根拠となります。
しかし、翻訳はまた別の問題を含みます。一般的な文章の翻訳と著作権に関する問題は、検索してもらうとしましょう。
MITライセンスでは改変が認められています。ですから自由に変更できます。原文はTaylorさんのものです。Taylorさんの著作物です。そこに私が本文やコメントを訳します。
ライセンス的な考え方をすれば、翻訳した本文やコメントは私の「差分成果物」で私の著作物です。しかし、日本の判例に従えば「原著者と翻訳者」の共著扱いです。ねえ、面倒でしょう。
コード部分は変更していませんので、明確にTaylorさんの著作物でMITライセンス下で公開されています。翻訳部分は私だけの著作物、もしくはTaylorさんとの著作物です。いずれにせよ、私が公開する意志があれば、公開に問題はないでしょうし、広告を張ることについて問題はありません。
ですから和文について広告を貼ろうと、もっと直接的にお金を取って会員限定で公開しようと、問題はありません。
著作権違反
そもそも、開発にLaravelやその他のオープンソースを使うとしているのに、ライセンスに注意を払わないのは愚の骨頂です。自分の利益を守るために、理解しておくべきことです。
ライセンス、とくにMITライセンスを理解していれば、私が何も悪いことをしていない、倫理や規律に違反した行為をしていないのは、分かるはずです。「Laravel?ああ、MITライセンスでしょう。問題なし。」
しかし、オープンソースは神聖なものである、携わる開発者は無償の貢献が求められるという神話を信じている人がまだたくさんいるようです。
この話も繰り返しますが、お金がなくて開発や改変が滞っているオープンソースプロジェクトはたくさんあります。OpenSSLの話を既に忘れているようです。
オープンソースは神聖なものではありません。一つの開発、ビジネス形態です。ある人はお金を稼ぐために携わります。Laravelはマネタライズできたプロジェクトで、そのため開発者のTaylorさんは専念できています。おかげで開発ピッチ、バグ対応が早い恩恵を私達利用者は受けています。
お金なんかいらないという人であっても、代わりに「名誉」とか「承認」だとかという欲のために携わっているのです。そうした欲求がなければ、どうしてオープンにする必要があるのでしょう。
仮にお金を得ることがいけないとしましょう。たいていの開発者はLaravelを使用し、開発し、成果物に対して対価を得ます。その金額は、私が広告を張ることで得られる金額より遥かに大きはずです。現状、月1万円ちょっとです。金額から判定すれば、開発して対価を得ている一般の開発者のほうが罪は重いということになりますよ。お金を得ることがだめだというのであれば。
しかし、そんなことはありません。ちゃんとMITライセンスがついているからです。あなたが無罪であるのと同様に、私も無罪です。
広告を張ることが悪いと言う声は私にとって、「オープンソース使ったんでしょう?元はタダですよね?だったらもっとまけてくださいよ。」とあなたが成果物に対して言われたときと同じです。それにより、あなたは「お前の仕事の分はさほど価値がない」と言われているように感じることでしょう。私も同じ気分です。
他の人の著作物を勝手に使っているサイトや、まとめサイト、キュレーションサイトと一緒にしないでください。そうしたサイトに反感を持つ人も多い人は承知しています。実のところ、私もそうです。そうだとしても、参照先サービスでコンテンツに対する一般的な著作権が放棄されていたり、きちんとコンテンツの一部が参照されたりしているのであれば、著作権の侵害ではありません。ウザくても違法ではありません。
ライセンスがあるため絶対に当てはまらないのですが、仮に私がLaravelのドキュメントを勝手にホストしていたとせよ、それを著作権の侵害だと言えるのは権利を持っている人です。つまり、Taylorさんのみ親告できます。第三者にはまったく関係がない話です。そもそも、とやかく言われる筋合いは初めからまったくないのです。
英語版
和文は私が訳したから問題なく、原文はTaylorさんの著作物だから問題ではないかという指摘がありました。繰り返しになりますがMITライセンスのため、問題はまったくありません。
readouble.comの英文は、和文の原文を示すためにホストしています。
原文は頻繁に更新されるため、それに合わせて毎回翻訳していられません。間隔を空けて翻訳作業をしています。そのため、原文はlaravel.comでホストされている内容より古いことが多いのです。ですから、readouble.comにわざわざアクセスしてくる外人さんはいません。検索結果からアクセスしてくる人が少数いる程度です。
さらに、laravel.com自体は広告を貼ったり、収益化していません。ですから、アクセスが増えるのはコストアップにつながるにせよ、メリットは余りありません。もし、それがどんどんreadouble.comに流れたとしても、負荷が減るという点で逆にありがたいはずです。
まあ、内容が古いため、ありえない話なのですが。
展望
既に、次のLaravel5.5は7月か8月にLTSとしてリリースされることがアナウンスされています。2回めのLTSのリリースです。もう2年経ちました。
このバージョンは、翻訳を手伝ってくれる人が既に存在しており、私以外の方も和訳に参加します。GitLabかGitHubで公開します。
ただ、リリース直前までドキュメントは5.5向けに書き直されません。それまでは、現在原文がメンテ期間中である和文を私個人がメンテするだけの作業です。
期間があるため、内部的な公開のワークフローと変換プログラムに手を入れようかと思います。その後に、CSSフレームワークであるFoundationのバージョンアップに合わせ、UIにも手を入れようとしています。なにせ「ひどい」とディスられましたので。(正直な話、ひどいとまでは行かないと思っています。お金を直接取っているサイトじゃないんですもの。ドックフーディングの結果今の形式にしました。私の使い勝手の良いようにしたのです。そもそも当時、本家の方が配色が目に染み、使い勝手が悪いため、今の形にしました。現在、本家はかなりまともになりましたね。readouble.comが本家に似せたのではなく、本家が似てきたのです。本家を真似したコピーサイトを作ろうとは初めから考えていません。)
しかし、UIに携わる方であれば分かるでしょうが、全ての人を満足させることのできるUIはありません。UIとはコミュニケーションです。コミュニケーションの答えは受け手にあります。人間は様々です。そのため、受け手の好みも捉え方も様々です。万人を満足させるUIなぞできません。
幸いにして、readouble.comは技術者の方しか利用していないかと思います。そこで、表示やUIに関してはプログラマブルに変更できるようにしようかと思います。それで、ごちゃごちゃ言う人もいなくなるでしょう。ただし、優先順位はとても低いです。別に現状でも困っていませんので。
もしくは、ご希望の方が多いようなら、より頻繁に原文の修正を反映し、翻訳の品質も向上させ、会員限定の有料サイトとするかですね。ええ、MITです。それでも、問題ありません。まあ、皆さん無料が好きですからね。可能性は低いですね。