体感、DigitalOcean、Linode、EC2の比較
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探せば、測定値による3つの比較記事はネット上で見つかります。ただ、最新のものでないと意味がありません。AWSのEC2インスタンスでSSD化されたEBSが使用できるようになりましたし、Linodeも全面SSD化されました。SSDであるという点だけでDigitalOceanの優位性は薄くなりました。
個人で使う場合の、個人的な使用感から3つを比べてみます。
DigitalOcean
長所はとにかく管理パネルがシンプルなことです。ちょっとしたことにサーバーを建てたい場合、LinodeやEC2のように複雑な管理ページを使い、何段かのステップを踏まなくてはならないのが重荷になる場合、さくっと立てられるのがDigitalOceanです。
もうひとつの長所は、スナップショットの保存が無料であることです。スナップショットを取るためには、Droplet(DigitalOceanのサーバーの呼び方)を一度止める必要がありますが、無料で保存しておけます。実際には料金は決められていますが、課金がまだ始まっていません。(いつ始まるかわからないので、無闇矢鱈に保存するのは止めましょう。)
また、初めて使用する人のため、年中10ドル分のクーポンを出しています。
欠点は日本にサーバーがなく、一番近いのはシンガポールのサーバーになることでしょう。そのため、レスポンススピードでは、他の2つに負けてしまいます。
また、英語でよく不満として書かれているのは、いきなり利用規約違反でアカウントを停止され、その理由を問い合わせても、紋切り型の返答しか得られないというものです。
多分、これはフォーラムやSNSタイプのサービスを立ち上げ、そこに法令違反、例えば一般の著作物であるとか、児童ポルノであるとかをアップされ、それを気づかず放置したとか、他のサーバーの攻撃の踏み台にされていたとかではないかと、私は推測しています。
利用者の多くは、このような目に合っていないので、自分のサイトを管理する責任があるということがわかっていないユーザーによる不満だとおもいます。ただ、理由を教えないというのは、いささか不思議な対応であると思います。
このような点から、長期的なサービスを行うよりは、短期間のサービス、一時的にサーバーが欲しい時に使用するのが良いかと思います。
Linode
長所は先ず日本にサーバーがあることでしょう。立ち上げ当時は、なかなかスピードが出ないとかの不満が在ったようですが、最近はそうした不満が見られません。
また、基本的に同じようなハードスペックのVPSに比べ、性能が比較的良い評価を受けています。これはプロビジョニングのスピードなどで、納得できるところです。
操作パネルからスワップを簡単に作成できるのも良い点です。
Linodeも年中いろいろなクーポンを発行しています。一定期間10%とか15%とかの割引を行うパターンが一番多いようです。先日は、Laravelのポッドキャストのスポンサーになり、50ドル分の使用ができるクーポンを出してくれる大盤振る舞いを行いました。
欠点は操作パネルの複雑さでしょう。やるべきことはそれとなく指示されています。しかし全体に表示アイテムが多く、乱雑な感じであり、しかも、ユーザーの注意を惹きつけるためのメリハリの付け方を行っていないため、初心者にはわかりづらくなっています。逆に言えば、ずっと使用する人には、使いやすいのでしょう。
もうひとつの欠点は、アウトの回線の制限が他より厳しいことでしょう。
そのため、処理スピード重視型のサービスには良いのではないでしょうか。
EC2
そもそも、AWSを以前の2つと比べることが間違っています。EC2を含めAWSは統合されたサービスで、ただのレンタルサーバーではありません。
そして、同じ程度のスペックでは、値段が高く付きます。というよりも、前の2つは飛行機で言うなら「LCC」です。例えば、両方共にDDosなどの攻撃を受けた場合、攻撃されている間はそのIPを無効にし、攻撃が収まったら有効にする手段を取ります。一方、AWSであれば上流回線でこれらの攻撃には対処してくれるようです。(まあ、全てではないでしょう。)
それでもあえて比較するならt2あたりのEC2インスタンスが料金的に比較対象となります。
長所は、まずセキュリティー面でしょう。全てを調べたわけでありませんが、上流である程度の対処を行ってくれるというのは、とても手間が省けます。
そして、格安VPSに比べれば高く付きますが、格安でない同等のサービスに比べれば値段が安いことでしょう。この優位性も、同業他社が値下げを余儀なくされているようなので、だんだん小さくなる傾向にあります。AWSも値下げを繰り返していますしね。
また、t2自身というよりEBSのSSD化による、スピードの向上が感じられます。特にまとめて処理を行うプロビジョニングやバッチ処理の実行時間から感じられます。SSD化されたEBSがまだ使用できなかった時期のベンチマークは参考にできなくなりました。新しい結果が出てくるのを待ちたいとおもいます。
短所は以前なら、処理スピードを上げたのですが、SSD化EBSによる恩恵もあり、改善されています。SSDではないEBSでIOPSをデフォルトのままでも一般的なハードディスクのスピードであるという解説を読んだことがありますが、実際の使用感としては一昔前のハードディスクのような感じでした。
あえて欠点を言えば、サーバー単体で使用する場合、前の2つと比較するなら、繰り返しになりますが、やはり割高なことでしょう。
私感
上記のような使用感を持っているため、状況により上記3つを使い分けるとしたら、以下のようになります。
安定したサービスの提供: EC2 > Linode > DigitalOcean
非常時のバックアップ: DigitalOcean > EC2 > Linode
ちょっとしたテスト環境: DigitalOcean > Linode > EC2
個人で使用し、安定したサービスを求めるならEC2のt2.smallかLinodeの月額20ドルのプランを先ず使います。アクセスが多くなければ複数サイトをまとめて運用します。ただ、さほど凝ったことをするのではないのであれば、ちょっと高めで安定した日本の共有サーバーを使うのが、正解かも知れません。(良い所を探すのが一番面倒なのですけれど。)
t2.smallでも結構さばけるようですし、Linodeは安定性で多くの人が勧めています。サーバーを一度止める必要はありますが、どちらもスペックを上げることが可能です。
個人で運営するレベルのサービスへ、非常時に動作するバックアップ環境を用意するなら、私の場合、実際はDigitalOcean一択です。スナップショットの保存が無料である限り、サービスのバックアップを用意しておいても、コストが全くかかりません。ビジネスベースなら、EC2というよりAWSかさくらのクラウドとかGoogleのクラウドプラットフォームとか、その他のクラウドサービスが検討対象になりますが、今回の趣旨とは外れています。
何かを「ちょっと」試したい。Vagrantなどの個人的な環境上ではなく、ネット上で試したい場合も、DititalOceanが第一候補になります。とにかく、簡単に立ち上がるのが魅力です。
それぞれのサービスが特徴を持っていますので、判断はさほど難しくありません。今度はGoogleのサービスも検討対象ですね。ちゃんと値段も同じようになっていますし。